-リノベーションのマニュアル-

Renovation Essentials


日本の住宅市場の課題と可能性にみる「リノベーション」のゆくえ


2014年6月17日にHOME'S 総研が発表した調査研究報告書、『STOCK & RENOVATION 2014』は、日本の「ストック型社会」への転換を軸に動きを見せている、中古住宅のリノベーションについて、実態調査も含めてまとめた、およそ220ページにわたるレポートです。

ここ数年存在感を増し、今後もさらなる拡大が予想される市場について、2014年時点での到達点と課題から今後の展望を見通した具体的な考察がなされています。その内容を一部抜粋しました。

 

ー特にここ数年、わが国の住宅事情において、中古住宅を購入し、リノベーションするという建築手法が、注目されてきています。

業界専門誌だけでなく、大手ポータルサイトから市販の建築・住宅雑誌にいたる一般消費者向けのメディアまで、「リノベーション」を扱う記事は定番の位置を占めるようにまでなってきました。大手企業も相次いで参入を表明し、リノベーション業界のみならず、住宅業界全体で大きな動きが見られます。

 

私たち日本人は、平均的な国民なら誰でも、少し手を伸ばせば新築の住宅を手に入れる自由は、すでに手に入れています。

それは、細心の注意で傷ひとつなく仕上げた、完璧にパッケージングされた住まいです。

 

しかし、果たしてそれで国民は本当に幸せになれたのでしょうか。

日本人が努力して築いてきた経済力や文化的水準に見合うだけの豊かで尊厳ある住まいを手に入れられたのでしょうか。

私たち日本人の「住まうこと」は、本当に自由なのでしょうか。

 

呪縛という言葉が浮かびます。たとえこの産業に関わる誰もが、これまでのシステムが持続可能ではないことは頭の中で分かっていたとしても、

また、ひとりひとりの職業人として理想とする住まいづくりと、このシステムの中で自分が提供している住まいづくりと、このシステムの中で提供している住まいとの間にどれほどのギャップを感じていようと、この重力の中から抜け出すことは容易なことではありません。別の道を選びなおすことで、現状維持よりももっと確実で大きな成長可能性があることを知ることが必要です。

 

日本の住宅不動産市場の近未来に関する大きな見取り図は、 2020年までに 既存住宅流通市場とリフォーム市場を20兆円まで 成長させるという国家戦略として打ち出されていることは周知のとおりです。これは、 何も「古い建物も大切にされて素晴らしいですね」的な綺麗ごとではありません。欧米コンプレックスでもありません。人口世帯数が減少していくことが確定している中で衰退が明らかなフロー型産業から、成長可能性が見込めるストック型産業への構造転換を促すものです。日本の住宅不動産業界が未来にも産業としての存在感を維持したければ、 海外進出と並んで不可避なテーマであることを、まず認識してもらいたいのです。

 


 「リノベーション」は、日本では新しい言葉として定着し始めてきましたが、建物そのものは、マンション、一戸建てにかかわらず、基礎部分が、建築されてから年月を経た「中古住宅」です。しかし、その中古住宅、いわゆる「住宅ストック」をどのように再生していくかということが、国の今後の施策として、大きな課題として議論が交わされています。

 日本の住宅ストックは、総務省「住宅・土地統計調査」によると、2008年の時点で、約5700万戸にものぼり、全世帯数約5000万帯を15%も上回っています。この現象は、いまだに増加傾向にあります。すなわち、全く居住者のいない「空き家」が増え続けているということなのです。

これまで、住宅購入といえば、「新築」が主流でしたが、今後、住生活の向上を目指していくためには、既存の住宅ストックを最大限に活用していかなければならない、というのが政府の見解です。

 また、地球環境や資源節約の観点からも「いいものをつくって、きちんと手入れをしながら長く大切に使うこと」、つまり、良質な住宅ストックを適切にメンテナンスし、必要に応じてリノベーションしながら、何世代にもわたり住まいの「価値」を守りながら継承していこうという仕組みが整備されつつあります。来たる2020年東京オリンピックを見据え、「リノベーション」は、もはや単なるトレンドではなく、国の方針としても「新しい文化」として国内に根付かせようという本格的な動きもあります。

 現在の日本における中古住宅流通やリノベーション市場の規模は、欧米諸国に比べれば、まだまだ成長過程といえるでしょうが、首都圏の中古マンションの取引件数が新築を上回るなど、広がりの動きを見せています。それは、リノベーションにより、中古住宅を有効活用し、魅力を高める取り組みが、実を結んでいるということも含まれているのです。やがて、このような仕組みと環境が定着することによって、住宅選びの幅も広がり、人生の節目やライフスタイルに応じて「住まい」の質を負担を軽く気楽に、向上させていくことができるのではないでしょうか? 

 物質的に成熟した日本にとって、「住み方」の改革の一環としての「リノベーション」は、国民の生活の向上を担う次の一手となり、期待が寄せられているのです。

 

 

 

参考資料・出典:

Stock & Renovation』HOME'S総研所長 島原万丈 編  株式会社ネクスト

『夢をかなえるリノベーション』佐藤慎二郎 著 かんき出版